不動産を相続したり、誰かに贈ったりするには、いろいろな法律や税金のルールが関わってきます。こうしたことは、普段あまり関わらない人にとっては、ちょっと難しく感じられるかもしれません。でも、きちんと仕組みを知って、事前に準備をしておけば、思わぬトラブルや高い税金を避けることができます。
この記事では、不動産の相続や贈与について、まず知っておきたい基本的なポイントと、実際に起こりやすい問題への対応方法について、わかりやすく解説していきます。
①不動産相続の基本的な流れ
不動産の相続は、いろいろな財産を家族などで分ける「遺産分け」の一つとして行われます。誰かが亡くなったあとには、まずその人が遺言を残していたかどうかを確認し、次に誰が相続人になるのかをはっきりさせます。そして、残された財産をどう分けるかを話し合って決めていきます。その中でも、家や土地などの不動産をどうやって分けるかは、とても重要なポイントになります。
相続税の問題
不動産は価値が高いことが多いので、相続する時にかかる「相続税」が大きくなることがあります。相続税は、「いくらまでは税金がかからない」という基準（＝基礎控除）を超えた分に対してかかってくるので、どれくらいの財産を相続するのかを、あらかじめしっかり把握しておくことが大切です。
特に、不動産の価値（評価額）がどう決まるかは、とても重要なポイントになります。主に次のような方法で評価されます。
- 路線価方式：都市部の土地には「路線価（ろせんか）」という目安の価格が決められていて、それを元に土地の相続税が計算されます。
- 固定資産税評価額：毎年送られてくる固定資産税の通知書に書かれている評価額を使って計算することもあります。
②不動産贈与のメリットとデメリット
不動産は、亡くなったあとに相続するだけでなく、生きているうちに家族などに「贈与（あげること）」するという方法もあります。これにはいくつかのメリットもあります。ただし、贈与には特別なルールや注意点もあるので、きちんと内容を理解してから行うことが大切です。
メリット
• 贈与税の控除: 年間110万円までの贈与は、贈与税がかからないため、計画的に少しずつ贈与することで相続税を軽減することができます。
• 贈与税の特例: 「住宅取得等資金の贈与」や「教育資金の一括贈与」などの特例を利用すれば、一定の条件下で贈与税が軽減される場合があります。
デメリット
• 贈与税の負担: 不動産の贈与は、高額な贈与税がかかる場合があります。贈与税は相続税と異なり、贈与を受けた年に一度だけ課税されます。
• 贈与契約の手続き: 不動産の贈与には登記手続きが必要であり、その際の手数料や税金も考慮しなければなりません。
③相続や贈与に関するトラブルの原因と解決法
不動産を相続したり、贈与したりするときには、家族や親せきの間で意見が合わなかったり、税金を誰がどう払うかでトラブルになることがあります。こうした問題を防ぐためには、早めに話し合ったり、きちんと準備をしておくことがとても大切です。
よくあるトラブル
• 遺産分割協議の難航: 不動産をどう分けるかを決めるときに、家族や親せきのあいだで考えが合わないことがあります。特に、一つの家や土地を何人かで一緒に持つ（共有する）ことになると、「誰が管理するか」「売るかどうか」などで意見が食い違いやすくなります。
• 相続税の支払い負担: 不動産を相続したときに、思っていたよりも相続税が高くて、支払いに困ってしまうことがあります。そのために、相続した土地や家を売らなければならないケースもありますが、そうなると「思い出のある家を手放したくない」といった気持ちの問題で、家族のあいだにトラブルが起きることもあります。
解決策
• 遺言書の活用: あらかじめ遺言書を作っておくことで、相続のときに家族の間で争いが起きにくくなります。遺言書には、「どの不動産を誰にあげるか」といった具体的な内容を書いておくことができるので、あとでモメるのを防ぐのに役立ちます。
• 専門家の相談: 相続税や贈与税については、税理士や不動産の専門家に相談することが大切です。特に、不動産の評価方法や税金を減らす方法については、専門家のアドバイスを受けることがとても重要です。
• 生前贈与の計画: 早い段階で不動産を贈与（あげること）することで、相続のときにかかる税金を少なくすることができます。ただし、贈与税の額や贈与契約書を作ることには注意が必要です。しっかりと計画を立てて行うことが大切です。
④不動産相続・贈与のために事前にできること
不動産の相続や贈与は、一度決めてしまうと後から取り消すことができません。そのため、あらかじめしっかり準備をしておけば、後でトラブルが起きるのを防ぐことができます。
事前準備のポイント
• 遺言書の作成: 自分の思いをはっきりさせるために、遺言書を作っておくことが勧められます。遺言書には、財産をどう分けるかや、贈与についての指示を具体的に書くことができます。
• 不動産の評価額を把握: 相続税や贈与税を正しく計算するためには、不動産の価値をあらかじめ確認しておくことが大切です。
• 贈与の計画的実施: 毎年110万円までの贈与枠を使って、少しずつ不動産を贈与していく方法もあります。
まとめ
不動産の相続や贈与には、税金や法律のことがたくさん関わってきますが、事前にしっかり準備をして、専門家に相談することで、トラブルを防ぐことができます。財産をスムーズに引き継ぐためには、早めに計画を立てて、正しい情報を集めることが大切です。自分に合った方法で、将来の不安を減らすための準備をしておきましょう。
